東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)55号 判決
一 請求原因一ないし三の項の事実は、当事者間に争いがない。
ところで、本件審決は、本願発明にかかる放電加工機の作動態様が本願発明の明細書及び図面からは全く不明であるとし、被告は、その作動態様の不明は被告主張の(イ)、(ロ)の点について存するものであるとするのに対し、原告は、そのような作動態様の不明は存しないとし、本件審決の取消を求めるので、以下この点について判断する。
二1 特許法第三六条第二項、第四項の規定によれば、特許出願の願書には、明細書及び必要な図面を添附しなければならず、明細書に記載すべき発明の詳細な説明には、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載しなければならないことが明らかであり、その発明の構成には、当該発明が解決しようとする問題点を解決するためどのような手段を講じたかをその作用とともに記載すべく、本件におけるように放電加工機の発明においては、その作動態様を記載すべきものと解される(特許法施行規則第二四条、様式第一六の備考13参照)。
2 そこで、本願発明にかかる放電加工機の作動態様について被告主張のような不明の点があるか否かについて、検討するに、争いのない請求原因二の事実と成立について争いのない甲第二号証(本願発明の明細書及び図面、以下この図面を単に「図面」という。)及び同第三号証(同手続補正書)とによれば、次の(一)ないし(四)のとおり認めることができる。
(一) リレーR3、R6の作動態様(付勢回路の形成)について
本願発明にかかる放電加工機の一つの選ばれた形式として図面に示された具体例における回転セレクタ・スイツチS1、S2、S3は、本願発明の構成要件「電圧倍加効果を選択することができるように(した)」、「放電周波数と放電電流密度とを選択的に調節するための粗調節回路と精密調節回路」についてのものであること、レバー・スイツチ11は、放電加工機を三相主電源10に接続するものであり、また、プツシユ・オン・スタート型スイツチS6及びプツシユ・オフ・ストツプ型スイツチS5は、それぞれの名称自体の意義から、それぞれ放電加工機の始動、停止のために押下されるべきスイツチと解すべきものであることが明らかである。
図面において、各回転セレクタ・スイツチS1、S2、S3は、右のとおりの、本願発明の特徴とされる多数通り存する加工条件(電圧倍加効果と放電周波数と放電電流密度)の選択のため、図示のOFF以外の位置へ回転調節されるが、その場合、
(1) スイツチS1、S2、S3に付設された接点S1-4―S1-8、S2-10―S2-20、S3-6―S3-12を接続状態とし、それによつて・接続点J1を、右各接点、リレーR2の常時閉じている接点C2-1及びリレーR4(三相モータ12の故障時の異常電流に応動するものと解しうる。)の常時閉じている接点を経て、接続点J4に接続するにいたるものであること
(2) 加工作動のため、レバー・スイツチ11が投入され、プツシユ・オン・スタート型スイツチS6が押下されると、(a)レバー・スイツチ11の投入によつて、右接続点J4は、三相主電源10の右側電流路線に接続され、三相主電源10の左側電流路線には、接続点J5、J6、J7を経て、リレーR3、R6の各コイルの下端が接続され、(b)プツシユ・オン・スタート型スイツチS6の押下によつて、右接続点J1は、プツシユ・オフ・ストツプ型スイツチS5の常時閉じている接点、接続点J10右スイツチS6の押下によつて閉じられた接点S6-1、接続点J11、常時閉じられている上限スイツチS7(後に詳述する。)、接続点J12を経て、リレーR3のコイルの上端に接続され、また、接続点J10から、右スイツチS6の押下によつて閉じられた接点6-2、接続点J13を経て、リレーR6の上端に接続されるにいたるものであること
右(1)、(2)の接続結果を併せると、リレーR3、R6の各コイルの上端は、ともに、接続点J1、J4を経て三相主電源10の右側電流路線に、また、同各コイルの下端は、ともに、接続点J7を経て三相主電源10の左側電流路線に接続されていること、これは、リレーR3、R6の各コイルの付勢回路が形成されているにほかならないこと
(3) 図面において、リレーR3、R6が付勢作動させられると、(a)リレーR3は、その接点C3-1、D3-2、C3-3を閉じ、三相主電源10をポンプ・モータ45に接続し、また、接点3-4を閉じ、接続点J10―J11間を接点S6-1に代つて接続し、プツシユ・オン・スタート型スイツチS6の釈放により接点S6-1が開かれても、付勢作動を継続させるようにし(自己保持回路の成立)、さらに、接点C3-5を閉じ、ポンプ・モータ45による槽42内への保護液供給が所定量に達したとき閉じるフロート・スイツチS4(ポンプ・モータ、フロート・スイツチの目的に徴し明らかである。)を経て、接続点J1を接続点J2に接続し、(b)リレーR6は、その接点C6-1を閉じ、接続点J11―J12間を常時閉じている上限スイツチS7とともに接続し、また、接点C6-2を閉じ、常時閉じている下限スイツチS8を経る、プツシユ・オン・スタート型スイツチS6の接点S6-2に代る自己保持回路を作り、接点C6-3を閉じ、接続点J2をリレーR1のコイルの左端に接続するにいたること
が、いずれも明らかである。
(二) リレーR1、R5の作動態様(付勢回路の形成)について
図面において、リレーR1のコイルの右端は接続点J8を経て、リレーR5の上端は接続点J5、J6を経て、ともに、接続点J7に接続されていることは明らかであり、また、リレーR1のコイルの左端、リレーR5の下端が、リレーR3、R6が作動しフロート・スイツチS4が閉じるとき、ともに、接続点J2を経て接続点J1に接続されること、右接続点J7、J1が三相主電源の左側電流路線及び右側電流路線にそれぞれ接続されることも前認定に徴し明らかであるから、リレーR1、R5の各コイルの付勢回路の形成されることが明らかである。
さらに、リレーR1、R5が付勢作動させられるときは、(a)リレーR1は、その接点C1-1、C1-2、C1-3を閉じ、三相主電源10を同期発電機13を駆動する三相モータ12に接続し、また、接点C1-4を閉じ、三相主電源10の左側電流路線を界磁整流変圧器19の下端に接続し、(b)リレーR5は、その連結スイツチ21を閉じ、上端を界磁整流変圧器19の上端とともに接続点J4に、下端を接続点J7に、直接接続されている駆動変圧器20を、サーボ・モータ23を駆動する増幅器22に接続し、放電加工機を作動状態にするものであることが明らかである。
(三) サーモスタツト25の作動により放電加工機の加工停止にいたる作動態様について
図面において、サーモスタツト25は、その温度、すなわち、槽42内の保護液の温度の上昇時、閉じること、そして、それが閉じるときは、駆動変圧器20の低電圧を取り出す回路24がリレーR2のコイルに接続されていて、これを付勢させ、その接点C2-1を開くものとされていること、接点C2-1が開くことは、接続点J1―J4間の接続を断つことにほかならない(前示(一)の(1))から、接点C2-1の接続により付勢作動させられているリレーR3、R6、ひいてR1、R5は、すべて復旧し(前示(二)の(b)のとおり、駆動変圧器20の接続は不変である。)、放電加工機は、加工停止にいたることが明らかである。
(四) 上限スイツチS7、下限スイツチS8の作動にともなう放電加工機の加工停止にいたる作動態様について
下限スイツチS8が開くことは、リレーR6の自己保持回路を断つことにほかならない(前示(一)の(3)(b))から、そのときリレーR6、ひいてリレーR1が復旧し、その結果、三相モータ12は停止し、界磁整流変圧器19の三相主電源10との接続は断たれ、したがつて、放電加工機が加工停止となることは、(二)の項の認定に徴し明らかである。
右状態において、上限スイツチS7が作動して開くときは、リレーR3も自己保持回路を断たれ(前示(一)の(3)(a))、リレーR5をともなつて復旧し、その結果、ポンプ・モータ45は停止し、増幅器22の駆動変圧器20の接続は断たれ、放電加工機は完全に停止することも明らかである。
3 右のとおりであるから、本願発明の明細書及び図面によれば、被告が指摘するような本願発明にかかる放電加工機の作動態様の不明はない。本件審決がこれを不明であるとしたのは、その余の点にわたり判断するまでもなく、違法であるといわなければならない。
三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を正当として認容する。
〔編註〕 本件に関する図面は左のとおりである。
<省略>